横振りミシン刺繍について


横振り刺繍ミシンこちらは私が使用している横振り刺繍ミシンです。
60年ほど前に製造されたミシンで、京都で職人をしていた頃もJUKI製の同じ型のミシンを使用していました。

横振り刺繍とは、約100年前に群馬県桐生市で生まれた伝統工芸です。
打掛や振袖、半衿など、刺繍に柔らかな味わいのある風合いが必要な和装品に多く用いられてきた刺繍技法であり、専用のミシンを用いて行います。

コンピューターなどは搭載しておらず、全てフリーハンドで刺繍をしていきます。コンピューター刺繍(ジャカード刺繍)と比べると、細い線や角など、細やかな表現を出しやすいのがこのミシンの特徴です。
コンピューター刺繍にはない、手仕事によって生み出される横振り刺繍ならではの表現の豊かさや温かさを、作品から感じて頂けたらと思います。

古いということもあり大変デリケートなミシンで、こちら側の気持ちが全てミシンに通じでいるんだなと思うほど、焦りや緊張がミシンのコンディションに顕著に現れてしまいます。
ミシンを踏むときには、好きな音楽や映画を流して気分良く、なるべくリラックスしてストレスなく作業ができるように心掛けています。

現在、横振り刺繍は職人の高齢化と継承者不足により、絶滅の危機に瀕している伝統工芸の一つと言われています。
ひっそりとこの技術が失われてしまう前に、少しでも多くの方にこの技術を知り、興味を持って頂きたいと考え、「100年続く伝統技術で現代に調和するものを。」というコンセプトのもと、横振り刺繍で作品を制作しています。